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第3回の夢録は、作家島地勝彦先生。
島地先生が雑誌「Pen」に連載なさっている「サロン・ド・シマジ」
に掲載された「北方謙三は美しき妖刀でマスターを斬った」。
ここに無外流居合の鵬玉会会長が登場します。
作家のペンにかかれば、どのように表現されるのか。
一瞬の居合の魅力をすくいとったその文章を先生の許可をいただいて転載します。
北方謙三は、
美しき妖刀で
マスターを斬った(雑誌Pen 2/1号)
▲作家島地先生とは、先生が集英社インターナショナル社長時代からのおつきあい。実は武田が中学時代に愛読した「今東光の極道辻説法」は編集者時代の島地勝彦氏の手によるもの。毎月お食事し、薫陶を受ける仲。
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北方謙三は剣もペンも自在に操れた。
北方は著者の近著『異端力のススメ』(光文社文庫)に「シマジと島地」という跋文(ばつぶん)を寄せた。
「(前略)編集者シマジは、島地勝彦という人間の一面であり、ほかの面は、編集者という顔にうまく隠されてきたような気がする。
吃音(きつおん)である。
吃音は、はにかみやで人見知りというのが、私がこれまで接してきた、吃音者の共通の性格である。
どちらが先かわからないが、そうなのである。編集者シマジは、その吃音すら武器にし、『意識は稲妻、舌は蝸牛』などという、賛辞のような表現を大作家から貰っている。
もっとも私は記憶で書いているので、その言葉が正確なものか、保証のかぎりではない。
編集者シマジは、喋りまくった。
吃りながら、言葉を連射する。
彼より若い作家であった私にすら、そうであった。
意識が速やかに口から出る言葉と連動しないもどかしさを、時々表情に出しながら、それでも聞くほうにとっては充分すぐるほどの言葉を発した。
しかし、彼が沈黙する時がないわけではない。
そういう時、ふと眼差しに、少年ぽさと同時に、はにかみが滲み出してくるのである。
眼が合うと、彼はちょっと微笑む。言葉を出すという表情ではなく、喋ることのむなしさに、一瞬だけ眼を向けてしまったという顔である。
それから、酒を飲むか煙を吐き出すかして編集者シマジに戻る(後略)」
北方謙三の切っ先は鋭く、まさにマスターはほとんど即死だった。
先日、東京・銀にある創作フレンチの店「キャーヴ ドゥ ギャマン エ ハナレ」に行ったとき、北方謙三はシガー用マッチに書き置きを残していた。
「島地勝彦さま、饒舌堂蝸牛殿、ここは俺の縄張りだから、黙って俺より高いワインを飲み、高い葉巻を喫ること」
その夜マスターはモルトを諦めて、ビジョン・ロングヴィル・コンテス・デ・ラランド2001を注文した。葉巻はトリニダッド・ロブストエクストラに着火した。
人生は出会いであり、何より尊いものは友情なのである。
謙ちゃん、ありがとう。
今月の鵬玉の夢録は、許可を得て島地勝彦先生の雑誌「Pen」からの転載。北方先生と鵬玉を描いた、緊迫感あふれる文章で、居合の心に迫ります。
今や10を超える雑誌、メディアの連載を持ち、新宿Men's Isetanには、カリスマバイヤーによるプロデュースで、シマジさんの眼によるセレクトショップとシガーバー「サロン・ド・シマジ」を持つ人気作家島地さんにはいつも感謝しています。
私が無外流明思派宗家から鵬玉会の立ち上げを勧められたとき、「0からスタートする武田への餞(はなむけ)だ、Penの2/1号を愉しみにしておけよ」と言われました。 |
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