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陸援隊田中光顕氏と近藤勇五郎氏、宮川豊治氏の肖像 (提供 宮川豊治さん )
6)近藤勇、辞世の句
武田 そう言えば、勇さんの辞世の句にも「君恩を思えば」という一節がありますが、宮川さんのお話を伺えば、この君恩は将軍を指しているわけではないかもしれませんね。私は会津公松平容保かなあ、と思っていました。
宮川さん 孤軍たすけ絶えて俘囚となる。
顧みて君恩を思えば涙さらに流る。
一片の丹衷よく節に殉ず。
雎陽千古これ吾がともがしら。
他になびき今日また何をか言わん。
義を取り生を捨つるは吾が尊ぶ所。
快く受けん電光三尺の剣。
只まさに一死をもって君恩に報いん
勇の辞世の句のことですね。
武田 そうです。
宮川さん この場合の君とは大樹公、つまり将軍ではないのではないかと私は思います。慶応4年1月に負けて江戸に戻り、甲陽鎮撫隊で行った当たりの行動も、そう考えると理解ができるのではないかと思うんです。甲陽鎮撫隊として戦いに行ったと思ったらすぐに帰ってくる。流山に行ったときも、着いた途端に出頭している。朝敵になることを恐れていたと考えれば、非常に納得できる行動と考えられるでしょう。
武田 なるほど。誠の旗に象徴されるような、誠心誠意込めてささげた相手は帝だったのではないか、ということですね。
7)誠にこめられたもの
(上記 敬称略)
宮川さん 昭和になって、土佐出身で明治政府の役人だった方が私の家に来られました。田中光顕さんとおっしゃいます。
武田 中岡慎太郎さんの陸援隊の方ですね?
宮川さん そうです。そして、勇の残した手紙を読んでこうおっしゃいました。「我々と同じ考えだったんですね」私には非常に印象的な言葉でした。
文久3年、京に行くあたりに書いた手紙が残っています。そこに、「忠君愛国尊皇攘夷」と書いているんです。芹沢先生とお会いするのはその後ですから、影響を受けて書いたのではありません。元から終始一貫そういう考えだったのでしょう。
武田 宮川さんの言葉を通して見える近藤勇は私たちがイメージしていた姿とは違う側面を持っているようです。
宮川さん そうですね。従来言われていたこととはちょっと違う勇が、残されたものを見ると見えてくるように思います。そのひたすら君恩に報いよう、私心ではなく、公の存在であろうとする気持ちが誠であったのでしょう。その誠を尽くすというのが、勇の思う武士道だったんじゃないでしょうか。
▲新撰組局長・近藤勇の肖像 ('国立国会図書館蔵 ) |
8)志を継承するとは
武田 ひたすら一所懸命になる。誠心誠意を込める。それが誠であったのでしょうか。その精神の美しさがあってこそ、剣の美しさにつながるように思います。
宮川さん 今の時代は忠君愛国ではないのかもしれませんが。
武田 そうですね。でも、たとえそうであっても、何かのためにひたすら誠心誠意を込めて努力する、それが誠だとすれば、誠をかかげて努力するというのは普遍的なことだと思います。私たち鵬玉会も誠心誠意を込め努力する、そんな武士道の道を求めたいと思います。
宮川さん そうですね。それがあの時代を必死に生き抜いた方たちの志を受け継ぐことでもあるんじゃないでしょうかね。
武田 私たちは継承した武道とその心を世に醸成し、次代の日本を背負う青少年にも伝えていきたいと思います。今日はありがとうございました。
鵬玉独白
古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ
今月の鵬玉の夢録は、新選組の近藤勇局長のご遺族、宮川豊治さん。NHK大河ドラマ「新選組!」の中でも近藤勇が板橋で処刑されたときのことを語っていらっしゃいました。
武士道を考える上では、平家物語に見る仏教的な見方もあれば、葉隠に代表される個人の生き方に関する見方、赤穂浪士に昇華されたものもあると思います。
その中でも、幕末に「武士とは何か」を突き詰めた新選組はとりわけ触媒として重要な位置を占めているように思います。特に新選組においては三番隊組長の斎藤一が無外流と言われます。居合の使い手であったのでしょう、武田観柳斎、谷三十郎など、主要な暗殺に関わったと言われるのは、居合が斬るともなく斬る技である所以です。
私たち鵬玉会は、無外流居合を通じて新選組とも近くなり、新選組が追いかけた武士道を考えてみる機会をもってみることができました。
私たちの姿勢は、松尾芭蕉が
「古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ」と「許六離別詞」に言うところと同じです。
志を受け継ぐとは、居合という武道の向こうの武士道を自分のものにすることなのかもしれません。
まだ出会っていないあなたとも、一緒に居合の向こうを見る機会を持てることを祈って。 |
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経験がなくても、老若男女を気にしなくても
こんな武道に興味がわいたら・・・ |
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